ふじみだい
ジャンル:友情
場所:南禅寺
Nanzen-ji Temple
大学の講義を抜け出して、みんなで南禅寺に行った。誰が言い出したかわからないけど、昼休みにそういう話題がでた。さっそく午後の講義が犠牲になるところが、僕らっぽくてよかった。
みんなわかっていたんだ。これで最後の紅葉狩りだと。今、大学4回生で、この秋を越えると全員バラバラになってしまう。だからこうして、京都での思い出づくりを急ピッチで進めている。
南禅寺は相変わらずの洗練された美しさで、あたりを流れる水と空気が僕らの心をやさしく包みこんでくれた。紅葉、水道橋、庭園など、初めてここにきたときから、僕の中で「京都」の代名詞だった。
「そう言えば、去年もここにきたよな」
メンバーの誰かが言った。うん、うんとみんなで頷いている。
出身のみんな違う僕らが、京都に集まって、こうして同じ時を過ごしている。それぞれの夢を語り、それぞれのクセを笑って、みんなでここまで来た。ゆっくりと時間をかけて、僕らは紅葉のように成熟した大人になれただろうか。社会人まであと一歩というところで、僕らは期待と不安の中にいた。
南禅寺の奥に向かって進み、水道橋を抜けて普段いかないような道に、僕らは足を進めた。大学4回生にして、最後に冒険してみたかったのだ。木々に囲まれた自然豊かな道を抜けると水力発電所にでた。何本もの巨大なパイプが右往左往する不思議な空間だった。さらに歩みを進めると、「あっ」と僕は思わず声を漏らした。
目の前には、三条蹴上のインクラインがあった。インクラインは春になると桜の名所で、僕らが1回生のときにここで花見をして、お互い親しくなった思い出の地だった。
あのとき、みんな照れながら自己紹介をして、新しく始まる大学生活を桜の下で迎えた。あれから、いろんなことがあった。みんなもそれを噛みしめている様子だった。1回生の時の僕らと4回生の今の僕らがつながった。
同時に、密度の濃い4年間が過ぎさってしまったことに対する寂しさが押し寄せてきた。4年間は本当にあっという間だった。あの時から少しは成長できただろうか。
僕は言った。
「卒業して、別々になるけど、またここへ来よう。たとえ結婚していても、妻や夫を連れて来い。約束だ」
みんな頷いて、僕らは輪になった。「京都バンザーイ!」僕らの手が天に伸びた。
南禅寺に戻って、置いていた自転車に乗った。
京都での青春を彩った地に別れを告げる。
「それじゃ、またここで」
僕らは、別々の道を歩み始めた。