| No |
タイトル |
ペンネーム |
内容 |
| 199 |
松茸の取持った縁<清閑寺> |
坂井 久光
|
戦前の昭和十六年頃の話である。東山の名刹清閑寺と清水寺との通りを平安女学院の二年生の春野由里が歩いていると街路の赤松の根元に一本の |
| 198 |
人里離れて<直指庵> |
楠沢朱泉 |
京都で過ごした学生時代、私は一人になりたくなると、よく直指庵を訪ねていた。 最初に行こうと思ったきっかけは簡単なことだ。 |
| 197 |
夢を叶える場所<鞍馬山の木の根道> |
明石鯛 |
「いよいよプロ野球選手の自主トレがはじまっています。 本日は、名門チームのライトで四番、内藤選手にお話をうかがいます。 内藤さ |
| 196 |
桜<平野神社> |
黒衣 |
牧野の表情は穏やかだった。 「ちょっと、寄り道してもよろしいでしょうか」と、一回り下の自分にも敬語で話し掛け、神戸から京都、 |
| 195 |
終点は恋のはじまり<三条大橋/鴨川> |
あゆひ |
紅葉の季節の京都は、風が冷たい。 夜ももう九時を過ぎ、気温がぐっと下がってきた。 「寒くない?」 野口くんが聞いてきた。 |
| 194 |
ウキフネ<宇治川> |
まさみ |
車が走り出すと係長は無言になった、予告通りに。 「柴田君の運転の邪魔したくないし。ナビは必要に応 じてするけど」 そういう |
| 193 |
京の再会<南禅寺> |
ふじみだい |
大学の講義を抜け出して、みんなで南禅寺に行った。誰が言い出したかわからないけど、昼休みにそういう話題がでた。さっそく午後の講義が犠 |
| 192 |
町屋でイタリアン<美郷> |
ジェシカ |
昔主人が子供の頃に住んでいた京町屋が、今やおしゃれなイタリアンレストランになっています。 表の部屋から、中庭に面した奥 |
| 191 |
魂が還るには<宇治川 中州> |
原 瑚都奈 |
京阪電車の宇治駅を出て横断歩道を渡ると、川沿いに観光に重きを置いた小道がある。そこを歩きながら、私は幼なじみである裕樹の十六歳に |
| 190 |
タワー<京都タワー> |
三里 顕 |
「安全の為に、影をお取り下さい」 エレベーターガールが言う。しかたがないので僕は靴べらを使って、足下から続く影を取り去った。 |
| 189 |
彼はわたしを見ている<京都芸術センター> |
永子 |
彼がわたしを見ている。 こちらを向いてはいない。ずっと手元の本に目を落としている。けど、そんなもの見てはいない。 わたしは知っ |
| 188 |
きょうとゆめのあいだ<大徳寺> |
イブスキ・シンイチロウ |
猫がにゃあと鳴いた。不思議な一日だったと思う。 「むかしは、たくさん来てたのよ」 そうツキコさんは言ったが、い |
| 187 |
京都の抜け雀<京都市役所> |
ずぼんしたはくのすけ |
「おっかあ面目ない。あの客無一文やった」 階段を下りてきた又八は、勘定場に辿り着くと申し訳 なさそうにそう言った。宿 |
| 186 |
変わり続けるべきもの<四条通> |
NAGISA |
「そもそも景観条例がどうこう言うなら、まずあの尊大ぶった大げさな京都駅からどうにかするべきだと思うね、僕は」 「そう? モダンで |
| 185 |
ノスタルジックガール<四条通> |
愛 |
突然気配を感じて振り返る。 薄紫色の生地に白い小花が散りばらめられた、見慣れた着物。見上げると、雪のような白い肌の女性が、にっ |
| 184 |
優しい時間<嵐山> |
はっさく |
携帯電話を右手で強く握り締めながら何杯目かの渋いコーヒーをすする。 古い茶店からは大堰川に掛かる渡月橋をはさんで嵐山と小倉山がよ |
| 183 |
嵐山の小猿<嵐山渡月橋> |
かいおん |
夜半、観光客の喧騒も途絶え、嵐山渡月橋を静寂が つつむ。少し雨が降っている。車も通らなくなった頃 に百鬼夜行が現れる |
| 182 |
音無の滝<音無しの滝> |
愛 |
『激しく流れ落ちる水は僕で、流れ落ちた僕をゆるやかに受ける滝壺が君』 滝が好きだという彼が、突然そんなことを言った。私はぷっと |
| 181 |
醍醐寺の大紅しだれの木霊<醍醐寺> |
江戸草一 |
もう自分の中で忘れてしまった方が良いと思っている思い出。 しかし自分の中のもう一人の自分が、そんな気持ちとは裏腹に決してその思 |
| 180 |
しあわせの水<伏見港> |
山丘桂三 |
庭木の葉が少し色づき始めたのに気づいた。「今年は少し早いみたい」亜衣には時間が自分を急かせているように思えた。大学4回生で社会福 |
| 179 |
渋い恋<銀閣寺> |
りょんりょん29 |
一回り以上離れた男と私は付き合っている。京都の寺が好きだというその男と六月に銀閣寺に行くことになった。 銀閣寺は正しくは |
| 178 |
ある送別<下鳥羽公園> |
カキモトマロ |
ある送別 紅葉した街路樹の周り一面に落ち葉が張りつくように散らばり、夕陽が西の山に隠れようとしている。六時前には会社を出なくて |
| 177 |
Nighthawks<二条城> |
侘助 |
「お頭。そろそろ刻限にございます」 「うむ。然らば頭数を改める。各組,順に数を申せ」 「へい。ひぃ,ふぅ,みぃ,よ,いつ,む… |
| 176 |
お地蔵さんのお守りさん<烏丸御池下ル> |
室町 あき |
彩は、昨日この町に引っ越してきた。朝、明るくなるのを待って「探検」を開始。まだ誰も起きだしていない静かな町に飛び出した。気になっ |
| 175 |
京都なんでも探偵団1<嵯峨小倉山> |
室町 あき |
「この写真の場所をさがしてください」。 こんな依頼が【京都なんでも探偵団】に舞い込んできた。探偵団といってもアキとトシの二人 |
| 174 |
さまよい<三年坂> |
富田圭介 |
小さな悲鳴を聞いて振り返ると、赤いバッグを持った小柄な女性がうずくまっていた。 くるぶしを痛めたと顔をしかめる女性を、俊樹は近 |
| 173 |
異世真鑑戻橋掛(ことのよまことかがみもどりのはしがけ)<一条戻り橋> |
侘助 |
〈渡辺の源次綱館の段〉 【媼】斯く成る刻に案内を請うは,子細の在りし事成れば。御容赦召され。御容赦召され。 【源次】怪しき声に |
| 172 |
半木の社<半木神社> |
山京東伝 |
上賀茂地区には、別夫が、下鴨地区には、御祖子がいた。 もともと二人は、一緒にいたのだが、1200年も前のある出来事によつて、別々 |
| 171 |
嵐山奇談<嵐山> |
あらしやま |
「あの、この前ここで一緒にお話されていた方は・・・・・」 「えっ?」 「一ヶ月ほど前、確か土曜日の朝、一緒にお話していた女の方 |
| 170 |
神獣たちの宴<大豊神社> |
仲町六絵 |
紅白まだらの椿の花が、夕闇にしたたるほどの蜜をこぼしていた。幼かった私は、指でそれをすくって舐めた。母親をほんの少し心配させたか |
| 169 |
恋のかみなり<北野天満宮> |
イチ |
鳥居をくぐる。並ぶ屋台の屋根の色。カレンダー屋の隣にすぐきの店が出ていて、ああもうそんな季節かと思った。 石畳の参道を草履の |
| 168 |
恋辻<大原三千院> |
チャムス |
幾度かの小旅行は、いつも彼の車で訪れた。 いつものように手際よく、三千院すぐ側に車を預け、境内に向かう。 夜には加茂川 |
| 167 |
3月9日<宇治橋左岸> |
げん |
「信じてもらえないかもしれないけれど。聴いてほしいことがあるの」 彼女は相変わらず頬がこけていたが、久しく見ていなかった化粧を薄 |
| 166 |
夕陽の足元<鈴虫寺> |
野棲あづこ |
学校から帰って来た息子が目に涙を浮かべて駄々をこねている。 今日も運動会のかけっこの練習でビリだったらしい。 去年まで勝 |
| 165 |
縁結び。ダブルで。<八坂神社> |
雨霧颯太 |
「縁結びのお守りを一つ」 心なしか、売り子の巫女が笑っているように見えた。 我ながら、恥ずかしいと思う。三十路前の男が、八 |
| 164 |
東福寺ファンタジー<東福寺> |
ゆりかもめ |
ルルルル――。電話が鳴っている。 「もしもし―、なんだ静香かよ。朝っぱらから起こすなよな。ああ、眠い眠い・・・」 付き合っ |
| 163 |
絆<清水寺> |
松 華菜子 |
「きれいな紅葉。これが清水の舞台なんだ。」 「パンフばっか見てあぶないよ。晴美。」 どーん。 「すみません。あっ!」 ぶつ |
| 162 |
京の正夢<平安神宮> |
蛙屋 無二斎 |
京都に住む俊夫は携帯のメールを開いた。そこには遠く九州大宰府に住んでいる 恋人のつもりの、時折、メールのやりとりをしている京子 |
| 161 |
南禅寺境内での野宿<南禅寺> |
蛙屋 無二斎 |
青春時代には結構無鉄砲なことをしたものである。 二十代の前半の二年間を尼崎市の技術系短大の寮で暮らしていた私は、勉強そっちのけ |
| 160 |
縁切りの枝垂桜<安井金比羅宮> |
七瀬椋 |
だらり帯の舞妓さんが、真っ直ぐ続く花見小路通の石畳を姿勢良く歩いている。 『私、舞妓さん体験してみたいんだ!』 |
| 159 |
紅葉の時<高雄> |
たなかなつみ |
このところの天候不順で、今年の紅葉もそうは色づいていないとさ。ニュースでもそう言っていたし、友人たちもそう口を揃えて言っていた。 |
| 158 |
ご当地変身スポット<伏見稲荷大社> |
henka |
最近、世の中は動物変身ブームで、「ご当地変身スポット」が流行り出している。今日、僕がやって来たのは、京都の伏見稲荷大社だ。ネット |
| 157 |
新緑<芬陀院> |
鎌田 誠 |
門を出て左に曲がると雪舟寺だった。東福寺の塔頭の一つだ。方丈の広縁に座り南庭を見る。5月の末、新緑と刈り込まれた躑躅にピンクの花が |
| 156 |
君に<直指庵> |
吉沢 慎一郎 |
この世のどこにも行くところがなかった。 追われていた。 執念深く、怖い追手だ。 何カ月も逃げ回って、京都に来た。 嵐山から |
| 155 |
あなたのことば<松ヶ崎大黒天 等> |
鈴木真由 |
明日転校する友達から手紙をもらった。学校があるから見送りには行けない。 だから会うのは最後だった。 わたしは泣いたが、彼女は笑 |
| 154 |
深泥池慕情<深泥池> |
山田 花子 |
あつ子は深泥池の近くに車を止めた。池の周りには誰一人いなかった。晩秋の風が肌に差し込むように冷たく感じた。車には夫の清次と4歳にな |
| 153 |
赤い桜<清水寺> |
ヒトシ |
清水へと続く五条坂。多くの店が軒を連ねている。私は妻のことを思い出す。 小言好きの妻は、店の前でいちいち立ち止まり、商品につ |
| 152 |
クダからボタモチ<紫式部の墓> |
Grace |
「部長のばーかっ! やってられっかこんちくしょー!」 飲んでも飲んでも忘れられないあのむかつく顔。その顔を蹴っ飛ばしてやりたい |
| 151 |
いぬとロケット<柊野> |
tat. |
オトは俺が幼い頃に家に来た雑種犬で、俺の弟分だ。 親も手を焼くバカ兄弟に成長した俺たちは、上賀茂神社の近くにある我が家から |
| 150 |
子童丸(しどうまる)の末期<蛇塚古墳> |
在神英資 |
蛇塚古墳は当初全長75メートルもある巨大な前方後円墳であった。しかし現代では前方は失われ後円の部分だけを残すのみである。 新 |
| 149 |
もう一つの清水寺<清水寺> |
渡会 瑠璃 |
「ねえ、知ってる?アテルイとモレの顕彰碑が、清水寺の境内にあるんだって」そう言ったのは、姪の飛鳥だった。 この二人は東北の |
| 148 |
オーディション<誓願寺> |
原 瑚都奈 |
禿げかけた頭をつるりと撫で、下がってきたズボンを上げる。そして幼い頃から小さい小さいと言われ続けた目をさらに細め、右脇に立つ石柱 |
| 147 |
平左と綾清<一条戻り橋> |
きるり |
おこしやす。 へぇ、これどすか?どうぞ… これはべっ甲の櫛と簪とどすなぁ。こちらの酒器は清水焼どす。 時代どすか?幕 |
| 146 |
徳井君のお婆<羅生門跡> |
八木 輝男 |
わたしと京子は京都の穴場スポットを訪ねるのを楽しみにしていた。 「今日は羅生門ね」 「芥川龍之介の小説の舞台の羅生門やね。あれ |
| 145 |
古井戸<今宮神社> |
paipai ibuchin |
会社をクビになり恋に破れた私は何もかも嫌になって京都に来た。 彷徨い歩いた結果たどり着いた今宮神社の門前に、名物あぶり餅を売る店 |
| 144 |
母と下る坂<清水寺> |
三里 顕 |
初めて京都に来たのは母のお供だった。いわゆる観光名所を案内してくれた母。 けれど、8歳の私をときめかせたのは清水寺、もっ |
| 143 |
憧憬<広隆寺> |
櫻みゅう |
見合い結婚をした母も恋愛をしたことがあったのか、幼い頃の私はとても興味があった。 まだ恋愛の『れ』の字もわからない頃、母に思 |
| 142 |
碁盤の目あみだくじ<白川北大路> |
あか |
ついに、この日が来た。 京都市街の地図を見る度、思っていた。 『碁盤の目で、あみだくじをしてやる。』と。 スタートは、二 |
| 141 |
穏やかなとき<京都御所> |
えがみさち |
毎年桜の季節は大変だ。京都御所の一般公開に合わせて露店を出す。祖父が興した漬物屋の三代目として、この時期は本当に忙しい。ゆっくり花 |
| 140 |
水上の京都<保津川、鴨川、哲学の道> |
夢見堂 |
川端康成は小説「古都」で細かい枝の先まで真っ白になる雪の北山杉を褒めていた。その後東山魁夷の画題「冬の華」に描かれた淡雪の北山杉 |
| 139 |
願い事<安井金比羅宮> |
祖乃やえ |
願い事 (安井金比羅宮) 「なんだ、これ」 境内に現れた奇妙な物体に、健司が素っ頓狂な声を上げた。お椀型の小山にびっしり |
| 138 |
峠の茶屋<伏見稲荷大社> |
八木 輝男 |
伏見稲荷大社の奥にあるお宮に置かれた重軽(おもかる)石と呼ばれるものを持ち上げうっとなった。(この石を持ち上げた時に、石の重さを軽 |
| 137 |
雨の参道<清水寺> |
えがみさち |
「何でよりによって京都なんだよ」 ボクはバスの中で、独り舌打ちした。 別に京都が嫌いなワケじゃない。むしろ好きな所だと思ってる |
| 136 |
夢<北野天満宮> |
りょんりょん29 |
「大学に合格しますように」 志保は手と手を合わせ、胸の中で強く願う。 祖母が認知症も含む寝たきりになったのは七か |
| 135 |
三世代の女<永観堂> |
Rena |
「きょうとー おおはら さんぜんいん」 明るい辛子色のパーカーを着た若い娘が、歩 きながら歌う。一、二、三、四、五歩分ほど |
| 134 |
春の陽射し<清水寺> |
大和 オサム |
桜の季節にはまだもう少しあるが、次の土曜日に京都に行こうかと言う私の誘いに、妻はすぐにうんとうなずいた。 京都のどこに行くか |
| 133 |
ほたる思い<哲学の道> |
宙猫 |
ここは、今日も、うつくしい。 皆からとみばあと呼ばれ慕われていた彼女。 「あれは、ほんまにええもんじゃなぁ。 田舎もんの |
| 132 |
親子放し飼い<一乗寺> |
Ringorin |
毎年夏 建築設計士とフローリストの親子が京都のあちこちに出没 その年のテーマを決め どこでも時間制限なしの<こころ往くまでサ |
| 131 |
銅閣寺<嵐山> |
瑠璃色4歳 |
僕は嵐山の名もなき寺に住んでいる。何故ここに住んでいるかは思い出せない。わかっていることは僕が記憶力がとても悪い事。しょっちゅう |
| 130 |
花宴<京都御所> |
じゅん |
桜が咲く頃は、誰もが浮かれた気分になります。夜桜見物などと称し、あちらこちらで宴会が行われます。 御所におかれましても、雅楽 |
| 129 |
海援隊入隊<木屋町通り> |
じゅん |
坂本龍馬が日本初の商社「亀山社中」を旗揚げした時に、掲げた事業目的は、「開拓、運輸、投機、射利」の四つであった。射利とは手段を選ば |
| 128 |
願い<清水寺> |
りょんりょん |
清水寺に来るのは、何回目だろう。多分、十回は超えている。 その古い歴史に憧れたのもある。 北法相宗という奈良の宗派に属す |
| 127 |
2039圓徳院<圓徳院> |
石原 旭 |
男がゴーグルのようなものを、顔にはめて中のお寺の庭らしき映像を見ている。 そこには春の穏やかな風景が広がっている。 |
| 126 |
宙と土<堺町通り押小路> |
西原 正 |
朝から舞うように降っていた小糠雨が上がり、御池通を東へ歩く平山智恵の視線の先に靄を払うように東山が姿を現した。鮮やかな緑の上を白 |
| 125 |
千本鳥居のキツネさま<伏見> |
Grace |
「21、22、23……」 真っ赤な鳥居を一本づつ数える。鳥居の向こうには、同じようにして歩く先輩の顔。 先輩はすらっとして |
| 124 |
天空の城<京都駅前> |
茶林小一 |
「キレイになったなあ」 「新しくなってから、ちょうど10年目なんだよ。色々便利になったんだぜ」 「前の駅舎も好きだった |
| 123 |
三条通商店街<三条通> |
オモチャノシンゾウ |
ある国の国防省が当国戦闘機がUFOに襲撃されたと公式に認めた。 まったくもってバカげた話だ。 あれは確か・・・ |
| 122 |
ある刀匠<鷹山寺> |
橋立ちほ |
彼は刀匠であった。 刀鍛冶の『甚江』と言えば、この街で知らないものはいなかった。平安のころから続く血筋であり、代々、名を世襲 |
| 121 |
吾は行くなり<哲学の道> |
信条皆無 |
哲学の道を全力疾走して、豪快に転んだ。 頭から突っ込んで、僕は顔面に傷を負ったけど、そんなことは全然気にならなかった。 泥 |
| 120 |
夕日<清水坂> |
flavor |
京都を離れて、もう2年が経つのか。 すっかり抜けてしまった関西弁、地元のことばに染まりきったこの私の順応性の良さよ… 大学 |
| 119 |
時よ、止まれ<嵯峨野> |
鱒淵たくみ |
「運転手さん! もっと、もっと急いで、お願いします!」 「わかってますよー。でも、この渋滞でしょ?」 タクシーの後部座席で、 |
| 118 |
動く絵のような二尊院の紅葉<二尊院> |
八代 穣 |
11月の末、私は妻と嵐山の渡月橋を渡り天竜寺の境内に入った。 曹源池周辺の紅葉を眺め庭園奥のくぐり戸から散策路に出た。 大河内 |
| 117 |
嵐山まで<嵐山渡月橋> |
小山 丹 |
私は詐欺師である。 私は今、嵐電といわれる嵐山行きの電車に乗っている。電車は家々の隙間を縫うように、ゆっくりと進んで行く。私の体 |
| 116 |
キャラメルの思い出<龍安寺> |
渡久地未樹子 |
雨の中で、君を見た。 雨に濡れた砂が描く線のひとつひとつが、僕の未来へとつながっているように感じた寒い日。 僕は君を見 |
| 115 |
庭園と京都弁<龍安寺苑池> |
ごんた |
京都は偶に来るから良いのでしょうと、京都に住む人から言われたことがある。盆地のため、夏は暑く冬は寒い。季節を通してずっと暮らすには |
| 114 |
ニルヴァーナ<本法寺> |
五十嵐彪太 |
空飛ぶ絨毯を追いかけている。こんなに大きな絨毯が宙を浮いているのに、歩く人も、車も、誰も気が付いていないみたい。上を向いて走る |
| 113 |
こんぶになったスターウォーズ<大宮開町> |
渡久地未樹子 |
日本に来て十年余り。私のようなアメリカから来た中年男が、バタくさい顔を堂々と揺らして、狐のような顔をした日本人たちとすれ違いながら |
| 112 |
池田屋事件<三条河原町> |
じゅん |
三条河原町にかつてあった旅館「池田屋」は、幕末に新撰組が襲撃した池田屋事件の舞台になった場所として有名である。その跡地に居酒屋がで |
| 111 |
探し物<宇治塔の島> |
伴橋祝 |
家から10分と少し自転車を走らせれば、そこは現世から離れた場所だった。私は自転 車を留め、自分の足で地面を踏み締める。私はあ |
| 110 |
五条大橋にて幽玄たるを知る<下京区五条大橋> |
立花 七松 |
『雨上がりの昼下がり。五常の道理に迷うあまりに、五条の橋にて立ち往生。感の極みに耐えかねて、いつしか心は遥か古へと。語り草たるは九 |
| 109 |
大石内蔵助と一力亭<祇園> |
じゅん |
夕方6時頃の祇園は、舞妓さん目当ての観光客でごったがえしている。特に花見小路の角にあるベンガラ色の壁を持った祇園一格式の高い御茶 |
| 108 |
『美しき良き地』<北野天満宮瑞饋祭駐賛所> |
mano |
京都駅での飲み会。少し遅れたお盆休みで帰京した会社の同僚を囲んでの久々の集合だ。 休日でもあり時間の余裕もあったので、 |
| 107 |
枕草子と清水寺<清水寺> |
じゅん |
早朝の清水寺は、修学旅行生もいなくて、とても落ち着いた雰囲気がある。昼間はごったがえしている舞台の上でさえ、人が誰もいないこともあ |
| 106 |
独りの雛人形<新門前通> |
安部孝作 |
久しぶりに新門前通のある骨董品店で昔買った雛人形を見つけました。 ――私は大学時代を京都で過ごしました。そこでよく京都の街 |
| 105 |
江戸の仇を京都で…<化野念仏寺> |
音川さくら |
「江戸の仇を京都で…」 JR京都駅から30前後の和服美人が乗車された。 「運転手さん、言いにくい話だけど~どこか水子の供 |
| 104 |
決戦<五条大橋> |
黒羽カラス |
黒い学生服の男子が先頭を歩く。セーラー服の女子が口を尖らせ、時に小走りで追いかけた。 「ちょっと、待ちなさいよ。歩くの |
| 103 |
抜け雀<永観堂> |
在神 英資 |
明け方、彩乃は雀の夢で目を覚ました。まだぐっすり眠っている有也を起こさぬようにそっとベッドを抜け出し、振り返って彼の顔をみる。結 |
| 102 |
天神さんに祟り<北野天満宮> |
じゅん |
「あなたー、北野さんがお見えよー。引越しのご挨拶ですって」 家内の声で、僕は玄関に向かった。そこには隣の北野夫婦がいた。 |
| 101 |
キツネ目の女(ひと)<伏見稲荷大社> |
じゅん |
こんな雨の日に、お山めぐりはやっぱりないよなあと、稲荷山の中腹にある仁志むら亭できつねうどんを食べながら僕は思った。晴れたら京都市 |
| 100 |
紅枝垂れの甘い罠<半木の道> |
川島旭 |
「じゃあ、待ち合わせは北大路駅で。 楽しみにしています」 メールの最後に入っていたハートに、 意味などないと思いながら |
| 99 |
小さな山でも山は山(大文字山)<銀閣寺唐門前> |
音川さくら |
「小さな山でも山は山」(大文字山) ある日、年配の女性と若い男性が乗車されて、「運転手さん、無理なお願い聞いていただけ |
| 98 |
恋占いの石~修学旅行の思い出~<地主神社> |
tanish |
私「綾香」と申します。今日は娘の修学旅行初日。夕飯は夫の分だけだなんて久しぶりです。よろしければ私の修学旅行の思い出話、聞いても |
| 97 |
忘れ傘<知恩院> |
渋江照彦 |
京都の知恩院には、左甚五郎が置いたとされる忘れ傘という物がある。何でも、水難除けだか火難除けだかに置いた物だそうで本堂の上に引っ |
| 96 |
タイムスリップ<上津屋橋(流れ橋)> |
さんぽみち |
「先輩!岡っ引きが居ましたよ!」 川原の茂みから後輩が叫びながら走しってくる。 大きな目をして顔は意外とまじめ顔。 冗談でも |
| 95 |
レンガのアーチの下に<水路閣> |
あいら やす |
毎年、同日、同時刻 私はこのレンガのアーチの下に来る。 一年にたった一日だけれど、 大切な人に逢う事ができる場所だから。 |
| 94 |
笑顔の出会い<愛宕念仏寺> |
黒羽カラス |
「……やっと着いた。都心のような渋滞に巻き込まれるなんて思わなかったよ」 「うん、そうだね。じゃあ、行こうか」 運転 |
| 93 |
父の日と銀閣寺<銀閣寺庭園> |
牛込太郎 |
政和の趣味はカメラだった。風光明媚な京都に住んでいたので、撮るものには困らなかった。特にお気に入りなのが金閣寺で、休みの日になる |
| 92 |
プロポーズ<大原野> |
山田 のこ |
「駐車場はたぶん混むから電車でいかへんか」と、里美を誘った。「いいよ」と里美はためらわず答える。 その明るさに、里美ってかわいい |
| 91 |
不思議な交差点<二条寺町> |
十十十 |
京都市役所前から寺町通りを北上し、ちょうど二条通りとぶつかる所にある、片仮名の「イ」を鏡に映したような変わった形の交差点。その交 |
| 90 |
肌の香り<祇園> |
highball |
祇園の石段の中を、タクシーは知ったもののように進んで行っていた。 かけ行灯のほの明るさが石段のつややかさを、この京都という町の底 |
| 89 |
肌の香り<祇園> |
payan |
祇園の石段の中を、タクシーは知ったもののように進んで行っていた。 かけ行灯のほの明るさが石段のつややかさを、この京都という町の底 |
| 88 |
心が帰りたいと叫ぶ京都~四条大橋にて~<祇園四条> |
橘祐介 |
死を迎える瞬間、もしも走馬灯のように思い出が 駆け巡るなら、きっと、京都はそこに映る。 18才。地元の大学に入学す |
| 87 |
寺田屋事件<寺田屋> |
じゅん |
京都に住むなら、町屋に住んでみたい。そういう思いから僕は、京都市伏見区にある町屋を借り、住み始めた。住んでみると、不便だが温もりを |
| 86 |
分かつ橋<嵐山渡月橋> |
黒羽カラス |
京都らしい善哉のような色の電車がホームに到着した。日中、青かった空にも淡い紅葉が始まる。降りた人々は疎らで足早に改札へと向かった |
| 85 |
グリーフワーク<永観堂> |
網傘 冬 |
何年か振りに呼ばれて冷たい椅子に座ると、眼鏡をかけた女の人が向こう側で待っていた。 「こんにちは誠人君」 挨拶は返さな |
| 84 |
入口の橋<木津川 笠置大橋> |
無月 火炎
(ムツキ ホムラ) |
四月の初め、私達は車で木津川沿いを走っていた。桜には少し早い時期だが、山並みの緑が目に美しい。今日私達は、木津川を下るカヌーツア |
| 83 |
朱のしおり<清水寺><清水寺> |
雨霧颯太 |
「いい、眺めだな」 僕は、長年憧れていた清水の舞台に立った。 雑誌や写真で見た場所に立つ興奮を噛み締め、舞台から見える山と |
| 82 |
丑刻参り<貴船神社> |
じゅん |
胸がしくしく痛むとかみさんに言ったところ、「お医者様にみてもらったら?」というので、会社を休んで医者に行った。 「先生、胸の辺り |
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「おかめ」と芸姑さん<千本釈迦堂> |
ヒロ京太郎 |
受験生の心強い味方として名高い北野天満宮… 別名『天神さん』から、東へ行くこと三百メートル… 徒歩でも充分な距離に、これまた初冬 |
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龍馬暗殺<三条河原町> |
じゅん |
四条通りの裏にある立ち飲み屋で一杯やったあと、すぐ近くのなじみのジャズバーでハイボールを飲んだ。バーテンと坂本龍馬の話となり、「今 |
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龍馬暗殺<三条河原町> |
じゅん |
四条通りの裏にある立ち飲み屋で一杯やったあと、すぐ近くのなじみのジャズバーでハイボールを飲んだ。バーテンと坂本龍馬の話となり、「今 |
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閑かなぬくもり<詩仙堂> |
ミカエラグッティ |
門をくぐり、竹林に挟まれた薄暗い石畳をゆっくりと奥に向かって足を進めるにつれ、心がしずまっていった。たどり着いた庵の入り口で受付 |
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仏作って・・・<石峯寺> |
石仏 |
「ここの羅漢さんたちはなぁ」 後ろから、話しかけられ石の仏様をしげしげと見つめていた僕はびくっと飛び上った 「夜、話をするんだ |
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コインランドリーで、はじまる恋もある<百万遍> |
じゅん |
学生時代、彼女がいないときの休日は暇で仕方がなかった。 部屋でTVをみたり、ギターを弾いたり、近くの本屋で立ち読みをしたり、 |
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地獄の裁判員<六道珍皇寺> |
じゅん |
秋は日が落ちるのが早い。松原通りから少し奥に入ったところにある市場は、夕食の買物をするお客であふれていた。そこでふと、こんにゃくを |
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地獄の裁判員<六道珍皇寺> |
じゅん |
秋は日が落ちるのが早い。松原通りから少し奥に入ったところにある市場は、夕食の買物をするお客であふれていた。 そこでふと、こん |
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鞍馬の夕暮れ<鞍馬寺> |
余蒼達昌 |
逃げるように新幹線に飛び乗って、京都まで来た。 仕事で失敗して、部長からは怒られたわけではなかったが、朝おきると会社の近く |
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笑うこま犬<清水寺> |
牛込太郎 |
店内は、清水寺の参拝に来たと思しき人々で混み合っていた。 隣の席にいたのが若い男女の二人連れで、一つのあんみつを二人で一 |
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鈍い輝き<京都御所> |
苦楽百景 |
私は重い心を引きずりながら歩いた。 そこは古の地であった。 ここ数年来の暗い気持ちが私を覆いつくしていた。 私はなにか変化が |
| 70 |
ゆめこひ<糺の森> |
muwi |
はやる気持ちが自然と足を急がせる。 美与は糺の森へ向かった。 「すんまへん。お待たせしてしもて」 「いいえ。私も先刻来たばか |
| 69 |
百日紅<松尾大社> |
司馬毬夫 |
松尾大社の山吹は満開だった。楼門を過ぎてすぐに石橋を渡る。石橋から小川に沿って橙の花弁が歓喜あれ騒乱あれと群れている。名もないよ |
| 68 |
散策<三条通> |
洛中遊民 |
京一は、京都の大学で芸術を専攻している。現在2年生である。地方出身で、京都市内に在住、通学している。京一には、嬉しいことがあって |
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京都に行きたい<京都駅前> |
にょろにょろ |
京都に行きたい ホンモノは良い、といつも彼女は言う。そりゃあ良いんだろうけど、バッグ一つに何十万円なんて僕には信じられな |
| 66 |
カフェで<中京区堺町通三条下る> |
日鳥章一 |
「また負けたの」「しょうがない、奢ってやるよ。何でも好きな物頼めよ。」 佐塚孝平は、そういって、昨夜、富雄のところで、麻雀で1 |
| 65 |
分かつ橋<嵐山渡月橋> |
黒羽カラス |
京都らしい善哉のような色の電車がホームに到着した。日中、青かった空にも淡い紅葉が始まる。降りた人々は疎らで足早に改札へと向かった |
| 64 |
お酒<松尾大社> |
オヤス |
松尾大社は酒の神がまつられている。京都人でもそれを知らない人は大勢いるが、私もその一人であった。 一度初詣に松尾大社に行き、酒樽 |
| 63 |
人間ドック<積翠園> |
原 瑚都奈 |
四十の誕生日を迎えると、会社の組合から「人間ドックを受けましょう」との文書が回ってきた。もうそんな年か、と目を丸くしながら家に帰 |
| 62 |
かざはな<高台寺> |
お茶漬けさらさら |
「そういえば、20年前もこんな風に雪が舞ってたわね・・・」 人力車は文の助茶屋から八坂の塔をへて高台寺への細道に入っていた。車夫 |
| 61 |
それは童歌とともに。<祇園 巽橋> |
朋瑠 |
その日、オレは彼女にフラれた。 3年も付き合って、今年大学を卒業したら結婚しよう、なんて笑いあっていたのは、つい最近のことだと思 |
| 60 |
夏色のであい橋<伏見港> |
あんてな |
「なぁ、もうしんどい…。」 「まだ、10分も歩いてへんやん。ほなら、あそこで一服して休も。」 「あそこって、出会い橋か?」 |
| 59 |
舞妓さんと紅葉狩り<高雄西明寺清滝川河原> |
西山宏 |
舞妓ちゃんと一緒に西明寺で釣鐘をついて拝んだあとの帰り道、下を流れる清滝川の河原に続く小道をみつけた。 「おりられそうやな、行っ |
| 58 |
始まりの兆し<西本願寺前~五条堀河通り> |
ミカエラグッティ |
深夜に広島を発ったバスは、明け方、京都駅烏丸口に到着した。まだ夜が明け切らない閑散とした京都駅。時計を見ると、6時前。予定では6 |
| 57 |
初恋<大文字> |
朋瑠 |
綺麗だと思った。 いつも一人で教室の窓際一番後ろに座っている彼女は、オレが高校2年になった春同じクラスに転校してきた。 長い黒 |
| 56 |
静謐を、心に<無鄰庵> |
蓮むい |
久しぶりのオフデー。 喧騒から逃れるように、岡崎まで足を運んだ。 平安神宮、美術館、図書館、動物園…それなりに静かながらも |
| 55 |
ひょうたんから駒<大阪城> |
怪傑アタロウ |
バスガイド「右手に見えますのが、太閤秀吉が生誕したといわれる田んぼのあと地です。えーと、この秀吉さんは、ご生母さまのお腹に12ヶ月 |
| 54 |
ことり<壬生寺> |
シャバサ |
幼少の頃、私はこの壬生寺によく足を運んだ。 母がサンドイッチを作ってくれた翌日は食パンの耳を袋に詰め、鳩達にやりに行った。こ |
| 53 |
桃山越えて<伏見北堀公園> |
石田智子 |
「もしもし、あ、うちな、今丹波橋に着いたとこ。ごめんな、これから歩いていくし、もうちょっとかかるわ。」 「わかった、ほなあと30 |
| 52 |
ティア・オフィーリア<三室戸寺境内> |
アロー |
「大丈夫ですか?」はっと気が付いたら三室戸寺という文字が目に入った。どうやってここまで来たのか。ずっと歩いたことしか覚えてない。何 |
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小さな恋のお社<下鴨神社> |
藤 みやこ |
美弥子は今年念願のD大学に入学した。受験勉強の重圧からようやく解き放たれた彼女が一番にやってみたことは 大学の硬式テニスのサークル |
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鴨川のおすしと丹波栗<鴨川河川敷> |
水墨夢子 |
鴨川のおすしと丹波栗 シルバー連休の最後の日、私は京都駅から新幹線に乗った。新幹線が鴨川を渡り、暮れなずむ川べりにふたりずつの人 |
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舞妓さんが転んだ(英資)<建仁寺> |
英資 |
帯をきれいに締めるのには工夫と力がいる。花街の芸舞妓におにいさんにきちんと締めてもらわんとなんや気色悪いと言ってもらうときは男衆( |
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大きな熊のぬいぐるみ (英資)<嵐山> |
英資 |
河原町行きの電車が向かいのホームに滑り込んできた。ぼくは降りてくる客を目で追った。見る限り久美の姿はない。時間は21時6分。この一 |
| 47 |
鬼ごっこ(英資 )<錦市場> |
英資 |
どうやら追いかけていた怪異を見失ってしまった。春先だというのにもう汗だくになっていた。 ダメだ、いったん立ち止まるとふくらはぎの |
| 46 |
唐銅香炉(英資)<本能寺> |
英資 |
燃えて灰燼に帰したかと勝手に思い込んでいた本能寺が再築されているというのを知り祐治は市役所への用事の帰りに覗いてみることにした。宝 |
| 45 |
栞(英資)<美山かやぶきの里> |
英資 |
直人の足元に一枚の古い写真が落ちた。拾い上げてみると鬱蒼とした森林を背景に茅葺きの家々が並び、手前にはひと夏の陽射しを浴びてきた稲 |
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三十三間堂(ひつじ)<三十三間堂> |
ひつじ |
「三十三間堂の仏像の中には、自分にそっくりなのがいるんだって。」 昔、誰かからきいたその話を信じ、度々、あのお堂を訪ねては目を凝 |
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ある朝 (ひつじ)<泉涌寺> |
ひつじ |
朝まで友達と飲み明かした朝は、いつも酔いさましに散歩をする。 坂をのぼり、総門から順にいくつかの七福神の名前をなぞりながら少し歩 |
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どこかで似ている(Rakan)<三十三間堂> |
Rakan |
親父にそっくりな仏像をみつけたとき、 「やだ、アナタにそっくり!」 妻が指を指して腹がよじれるとばかりに笑いだした。係員に注意 |
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チキンレース(Rakan)<清水寺> |
Rakan |
私の生き甲斐は清水の舞台の欄干に足をとめて景色を眺めることだ。特に紅葉広がる秋は素敵だ。燃ゆる魂がそこにある。 まれに人間が近づ |
| 40 |
お母さんとプリン(Rakan)<銀閣寺参道> |
Rakan |
4歳までのお母さんは銀閣寺が好きだった。理由は「きらきらしていないから」。 庭園に入ってすぐ目に入る向月台という砂盛がプリンに見 |
| 39 |
私の願い(Rakan)<鈴虫寺> |
Rakan |
長い石段を登る後姿を守るように追いかけていたら、あなたは振り返って。 「よく叶うんだってね」と息を整え微笑んだ。私は頷いて、 |
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帰還(だい)<京都駅前> |
だい |
京都を離れて十数年になる。その間に何度かこの古都を訪れてはいるのだが、その度に違和感を覚えるのはやはり、日本一長いホームを持つこと |
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水底のあなた(みわこ)<深泥池> |
みわこ |
篠突く雨が降りそそぐ夕暮れどき。 私はひとり、深泥が池の淵に佇んでいる。 ここは、かつて龍神の棲む沼と畏れられ、平安の世には貴 |
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もみじ(哀川ノン)<光明寺> |
哀川ノン |
総本山光明寺と書かれた門をくぐり、亜紀と一緒に、表参道の石段をとろとろ上っていく。 この長岡京市まで多くの観光バスが訪れるほど人 |
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夕霧(愛)<音無しの滝> |
愛 |
『激しく流れ落ちる水は僕で、流れ落ちた僕をゆるやかに受ける滝壺が君』 滝が好きだという彼が、突然そんなことを言った。私はぷっと噴 |
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猫の町(松尾佑一)<一乗寺築田町> |
松尾佑一 |
ある山間の宿に泊まっている男が、散歩しているうちに道を見失い、まったく見たこともない町に辿り着く。その町では猫が二足歩行の姿で暮ら |
| 33 |
鴨川デルタの亀(松尾佑一)<鴨川デルタ> |
松尾佑一 |
むかし勤めていたバイト先の後輩が結婚した。僕に何の断りもなくかわいらしい彼女を作り、許可も得ずに愛妻料理を口にしているということだ |
| 32 |
源光庵 (西山 宏)<源光庵中庭> |
西山 宏 |
京都市北区鷹峯。この時期街から離れているせいかあまり観光客が訪れない。結構有名な場所なのに。 実は観光客が多くは紅葉の名所と |
| 31 |
小姓の息抜き(野棲あづこ)<二条城> |
野棲あづこ |
「うわ、広いなぁ」 鶯張りの廊下は歩くたびにきゅっきゅと軽快な音を立てる。 前を歩く6歳の息子が早歩きをしているのは駈け出した |
| 30 |
流れゆく(たなかなつみ) <賀茂川> |
たなかなつみ |
京都に流れる川の名が、「鴨川」だということは知っていた。 あちらで仕事を失い、向こうで恋を失い、流れ流れてたどりついた京都の |
| 29 |
目撃者(ヤマシタクニコ)<京都タワー> |
ヤマシタクニコ |
ああ、どうか許してください、もう、決してあんなことはいたしません。私も、生まれて50年、まじめに働いて、細々と暮らしてきました。魔 |
| 28 |
梅の花が咲いたら( Rakan)<北野天満宮> |
Rakan |
3月上旬に京都に来た。もう少し待てば桜が咲いて賑わうのに。どうして彼はずれているんだろう。 タクシー乗ったとたん「北野天満宮」 |
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昔は映画館とジャズ喫茶で有名だったところだとは聞いていたけど(たなかなつみ )<一乗寺> |
たなかなつみ |
最近になって、観光客から道を聞かれることが増えた。 京都は観光で成り立っている街とはいえ、全国的に有名な観光地は、ここから |
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10 月 22 日に祭りがある(たなかなつみ)<一乗寺> |
たなかなつみ |
だらだら坂を登り続ける。 最近の自転車ブームにあやかって、少し街中から離れれば、あちらもこちらもスポーツバイクが走っている |
| 25 |
幸せまでの時間(楠沢朱泉)<錦市場> |
楠沢朱泉 |
錦市場に着くなり、彼女はいそいそと手帳に挟んであったメモを取り出した。そこには小さな文字がびっしりと並んでいる。 それは何で |
| 24 |
月銀奇譚(アンデッド)<井戸峠> |
アンデッド |
灯り一つに身も一つ。 月に夜雲(よぐも)がかかる中。 一人で夜道は、怖い怖い。 京の都の井戸峠。夜道を一人でとぼ |
| 23 |
輝かしい滑降(はやみかつとし)<インクライン> |
はやみかつとし |
きみと手をつないでここを歩くのが好きだ。人の背丈よりも幅のある線路の間にしつらえられた散策用の飛び石や、もう一組の線路の間の砂利 |
| 22 |
季節限定の恋人(たなかなつみ)<京都府立植物園> |
たなかなつみ |
彼女と出会ったのは春先のことで、ぼくは華やかな笑顔の彼女に夢中になった。震える拳を握りしめて、つきあって下さいとお願いすると、彼 |
| 21 |
甘いお肉でしょっぱいすき焼き(空虹桜)<三嶋亭> |
空虹桜 |
「六年生だから十二歳」 「ああ、一番大人がイメージする『子ども』像とのギャップが激しい歳頃だ」 まだ二人の距離というか間合い |
| 20 |
ステイヤーズ・ブルース(空虹桜)<京都競馬場> |
空虹桜 |
第3コーナの上り坂を外からまくっていく黒鹿毛に目を奪われた。第4コーナに差し掛かるあたりで先頭に立ち、勢いのままに最後の直線を向 |
| 19 |
戻ル橋(五十嵐彪太)<一条戻り橋> |
五十嵐彪太 |
あの時、一条戻橋で遊んだのは、式神だったかもしれぬ。 そんなことを思いながら、清明神社に向かっていた。 清明神社の前に架か |
| 18 |
鈴虫寺を知っていますか?(黒犬美尾)<鈴虫寺お地蔵様> |
黒犬美尾 |
「鈴虫寺に行こうと思うん」 二人きりの給湯室で同僚の永子に視線をあわせないままポツンとつぶやかれた。 「鈴虫寺?」 「知らん |
| 17 |
恋占いの石(黒犬美尾)<地主神社> |
黒犬美尾 |
「ねえ、恋占いの石覚えてる?」 私は震えていた。 「地主神社って教えてくれたっけ?あそこの境内に守護石がふたつあっ |
| 16 |
彼の作品(楠沢朱泉)<天龍寺> |
楠沢朱泉 |
一眼レフのファインダーをのぞき込むと、目の前に広がっていた景色が切り取られた。そのままカメラのレンズを左右上下へ移動させる。時に |
| 15 |
幸福地蔵さん(本田モカ)<鈴虫寺お地蔵様> |
本田モカ |
妹と一緒に縁結びで有名な京都の鈴虫寺を訪れた。 ここの石段を上がった山門脇には『幸福地蔵さん』と呼ばれる珍しいわらじを履いたお地 |
| 14 |
恋占いの石(本田モカ)<地主神社> |
本田モカ |
「京都の地主神社の御本殿の前に少し離して2つの石が置いてある。 これが有名な恋占いの石である。 2つの石の間の距離は10メート |
| 13 |
はかなげな(五十嵐彪太)<哲学の道> |
五十嵐彪太 |
空色の飛行機のモビールを手に、少年は一人で歩いている。 哲学の道は桜が満開で、こんなにもよいお天気の午後なのに、 そこ |
| 12 |
サマータイム・サマータイム(空虹桜<東本願寺前> |
空虹桜 |
五条まで地下鉄で出て、ぶらぶら烏丸通を下る。京都をぶらぶら。略して京ぶら。訳してワコール。なこと言ってるの、たぶんわたしだけだけ |
| 11 |
堀川上ル(わんでるんぐ)<一条戻り橋> |
わんでるんぐ |
桜の京都を見物しようと来たのはいいが、名所はどこも花の数ほど人がいる。穴場はないか、宿の主人に尋ねると、夜の二条城はどうだと言っ |
| 10 |
夏の想い出(はやみかつとし)<高台寺 傘亭・時雨亭> |
はやみかつとし |
かれこれ四百年にもなろうというのですねえ。 今でもほら、のろしのような煙が立つのが、未申の方に見えますでしょう。 あれか |
| 9 |
祈り(たなかなつみ)<愛宕神社> |
たなかなつみ |
痛む腹を抱えて、大通りを走る。 腹を押さえた手の指の隙間を縫って血が滴り落ち、その奥でぐじゅぐじゅと内蔵がもがき、出たい出た |
| 8 |
退屈な紳士(ヤマシタクニコ)<北野天満宮> |
ヤマシタクニコ |
ある日、街を歩いていると、一人の男に声をかけられた。 「すみませんが、よろしければ少しつきあっていただけませんか。あ、いえ、 |
| 7 |
京都の男(アンデッド)<祇園> |
アンデッド |
女は眠りにつくと、毎晩同じ夢を見た。それは、京都・祇園で理想の男が現れる幸せな夢だった。 初めの内はとても幸せな気分だったが |
| 6 |
33 Blues(穂坂コウジ)<三十三間堂> |
穂坂コウジ |
朝、民宿を出ると快晴だった。昨晩の嵐が嘘のようだ。腫れぼったくなった目をこすりながら早朝の路地を行く。通りに出てすぐのコンビニに立 |
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抹茶パフェを見つめる女(タカスギシンタロ)<都路里> |
タカスギシンタロ |
「どうしてみんな気づかないのかしら」 祇園の人気店だけあって、店内はいつものようにごった返している。土曜日なので外には行列まで |
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義経異聞(不狼児)<五条大橋> |
不狼児 |
五条大橋の欄干には、牛若丸が弁慶と戦った時に付いた足指の跡が、まだ残っている。なんど橋を架け替えても指跡は同じところに浮いてくる |
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流れる(タキガワ)<伏見港> |
タキガワ |
友人が、舟に乗りたいと言いだした。橋の下を、ちいさな川とちいさな舟がくぐり抜けてゆく。 わたしはそこらでお菓子でも食べながら |
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陰陽師の器(Rakan)<晴明神社> |
Rakan |
安倍晴明の恋人希望とか、弟子希望とか、前世で関わりがあったとか、そういう人間も多々訪れる。旧一條戻り橋の番人をつとめる式神の私に |
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アルバイト(英資)<六道珍皇寺> |
英資 |
役所勤めも長くなると部下の変化に目を配る余裕も出てくる。最近では小野くんの様子がおかしいのをわたしが見落とすわけもなかった。彼は |